「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第40話

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環境整備編
<駄々っ子>



 儀式魔法(偽)ショーで盛り上がった翌朝、アルフィンはいつものように夜明けと共に起きて(と言うか起されて)予め朝食前に済ますと決められていた前日の報告をメルヴァから受けていた

 「あら、思ったより経費が掛かったのね」
 「はい。アルフィン様とシャイナ様がかなり御力を御入れになられましたので。しかし、想定の範囲から大きく逸脱はしていないのでこんなものかと」

 なんかチクリとやられた気がするけど、まぁメルヴァが想定内だと言うのなら問題は無いんじゃないかな? 実際地下4階層で収穫できるものだけで昨日の食事関係は賄えているだろうし、それならば確かにたいした問題ではないだろう。あそこの物は文字通り売るほど採れるようになっているのだからね。それに料理やお菓子を作る労力にしても、元々今の体制では仕事が無くて遊ぶ者が出て困っていると報告を受ける程余裕があるのだから返って良かったくらいかも

 「なら問題は無いわね。ところで子供達はどうしてる? 昨日の夜、遅かったからまだ寝てる子、居るんでしょ?」
 「いいえ、すでにほとんどの子が起床しております」

 驚いた事にいつも起きている夜明けと共にほとんどの子が目を覚ましたそうな。おまけに朝の仕事をしないとと言い出す子も多いと言う。ホントこの世界の子供達は働き者だ。ちなみに、今日の子供達の仕事は全部お休みにしてもらった。その代わりに城からメイドたちを派遣して働くように指示してあるのよね

 これは折角だしもう一日くらい遊ばせてあげてもいいだろうと言う私とシャイナ、まるんの共通の意見で勝手に決めさせてもらった事で、前もってボウドアの村の大人達と野盗の家族達にはそう伝えてあるの。まぁ、本音を言えばそうしないとみんな帰ってしまうからそれを阻止しようという私達の悪巧みの結果だったりもするんだけどね

 「それじゃあみんなお腹を空かしているんでしょ。なら朝食の準備を早めにお願いね。後、朝食後に予定通りカルロッテさんと話をするのでその準備もお願い」
 「畏まりました」

 まぁ指示を出すまでも無く、メルヴァはすべて準備を進めているだろうけど一応ね

 案の定メルヴァが下がってから5分ほどでココミが呼びに来たので、一緒に別館A棟の食堂に行って子供達と一緒に食事。その後、本館1階の応接間で私はカルロッテさんと机を挟んで話をする事になった

 「私を雇うと仰るのですか?」
 「はい。私達は異国の者です。こうして会話する事自体はある方法で問題なくできるのですが文字を書くとなるとそうは行きません。当然長い時間を掛けて習得する必要があるのですが、もろもろの事情によりその時間を取れない状況にあるのです。そこで誰か変わりに通達などの文章や書類を作成してくれる方を雇う必要があるのですが、私達にはそのツテも無いので正直困っていたんですよ。そこにちゃんとした教育を受けていて、なおかつ文字が書けるあなたが現れたのでこれは幸いと声を掛ける事にしたのですか。どうでしょう、私達に力を貸してはもらえませんか?」

 突然の申し出に、驚きながらも私の言葉を真剣に聞くカルロッテさん。そして話を聞き終わると微笑み

 「もちろんです、アルフィン様。こんな私でよければ喜んで」
 「ありがとう、受けてくれるのね」

 快諾してくれた

 「私達はこのお屋敷で住まわせていただく家賃代わりに雑務をする事になると聞かされて移り住みました。しかし、庭のお手入れはメイドの方々がすべて完璧に行っていますし、従事する事になるかもしれないと言われていた農作業も、耕す農地そのものがありません。私達がやっている事と言えば自分たちが住まわせていただいているお屋敷の掃除くらいで、これでは何も働いていないのと同じで申し訳なく思っていたのです。今ならば解ります、あのお言葉は私達がこのお屋敷に移り住みやすいよう、あえて嘘を私達に仰ってくださったのでしょう。このお話はそんなアルフィン様の御心に報いるチャンスなのです。むしろこちらからお願いします、もし私がアルフィン様の御力になれるのでしたら、どうぞ使ってやってください」
 「ありがとう。助かるわ。これからよろしくね」

 そう言うと立ち上がってカルロッテさんの手を取る。握手を交わして契約成立だ。本当ならここで書面を交わすとかするのだろうけど、今回はその書面を作るための人材を雇う交渉なのでそんな物は当然無しの信頼関係だけでの口約束。でも、この口約束は裏切られる事はきっと無いだろう


 カルロッテさんを玄関まで見送ってこの館での公務は終了。一度自分に割り当てられた部屋に戻って、ココミの入れてくれた紅茶を片手にソファーでゆったりとくつろぐ

 「さて仕事の予定はこれで終わったし、少し休んだらユーリアちゃん達と遊ぼうかな」

 今頃まるんとシャイナは彼女達と遊んでいるはずだ。立場上彼女達ほどはしゃぐ事は流石にできないけど、ある程度は羽目をはずしてもいいよね、昨日あんなにがんばったんだし。と、そんな事を考えていたんだけどそう簡単には行かなかった

 「ダメです。アルフィン様には公務があるのでお城に戻っていただきます」
 「えっ?」

 私の希望を一刀両断する声。メルヴァである。彼女はいつの間にかセルニアとヨウコを引き連れて私の部屋の入り口に立っていた。横で扉を開けたメイドが頭を下げているしメルヴァもノックをするような形で手を上げている所を見ると、するつもりはあったのだろうけど私の言葉を聞いて、ついその前に声を掛けてしまったのだろう

 「今日はお休みではないはずですよ、アルフィン様」
 「えっ、だって本来は昨日休みだったのに私、仕事したよ。なら今日は代休でいいじゃない」

 確かに私の休みは昨日一日だったはずだけど、午前中から儀式魔法(偽)ショーの準備などで働いたじゃない。なら今日は代休じゃないの? 

 「いえ、あれは公務ではありませんから。それに今日はいつもの視察ではなく、前々からあいしゃ様が取り掛かられている”あれ”が出来る日です。他の者の仕事の視察や物事の承認作業ならほかの日に変更されても宜しいのですが、他ならぬあいしゃ様の成果を確認される大事な御予定なのですから今日だけは絶対にダメです」

 たっ確かにあれは公務ではないだろうけど、でもでも・・・

 「えぇ〜、いいじゃない。ほんの少しだけ、ほんの少しだけ遊ばせて。あいしゃには私から誤っておくから」
 「ダメですっ! 時間があればその他にも見てもらいたい事があると下の者達からも申請がいくつも出ていますから、本来ならこんな会話をする時間も惜しいほどアルフィン様の御仕事は山のように溜まっております。ですから、そのような時間はありません。今からすぐに城に帰っていただきます!」

 いけない、このままでは本当に城に連れ帰らされてユーリアちゃん達と遊べなくなってしまう。でも困った事にメルヴァの言っている事の方が正しいし、それを論破する言葉が私にはまったく浮かばないのよ。でも絶対にこのまま帰りたくはない! そうよ、もうこうなったら子供のように駄々をこねるしかない! 情けない決心だけど、メルヴァは私が作ったNPCだし必死に嫌がって見せればきっと聞いてくれるはずだ!

 ・・・そんな風に考えていた時期もありました

 「いやよ、今日はユーリアちゃん達と遊ぶんだから! 絶対に城には帰らないからね!」

 そう言ってそっぽを向く私。しかし

 「ふう、仕方ありませんね。ヨウコ、やはりこうなったから手筈通りにね」
 「はい、メルヴァ様。アルフィン様、失礼します」

 メルヴァがそう言うと後ろに控えていたヨウコが私のそばまで歩み寄り、一礼をする。と同時にココミが私の持っていた紅茶を取り上げて

 「えっ? えっ?」

 ヒョイっ

 なんとヨウコが私を肩に担ぎ上げた。お姫様抱っことかじゃないわよ。文字通り担ぎ上げられてしまったの。流石にこれにはびっくり。だっていつもは私に絶対の忠誠と敬意を払っているヨウコがこんな事をしたのだから

 「どっどういう事? いくらなんでもこんな荷物みたいに」
 「私も心苦しいのです。しかしアルフィン様が言う事を聞いてくれないであろうと考えたのでシャイナ様とまるん様に御相談した所、御二人とも『仕事なんでしょ? なら仕方がないし、ごねるようなら担いで帰ればいいと思うよ』と笑顔で仰られたので」

 確かに仕事だから仕方がないけど、よりによってなんて事を言うのよ、あの二人は! 自キャラたちの突然の裏切り(と書いて正論と読む)に茫然自失状態になってしまう私

 「御理解いただけましたでしょうか? それではヨウコ、行きますよ」
 「はい、メルヴァ様」

 しかし、私が呆けている間にも事は進む。いけない! このまま何もしなければ城に連れ戻されてしまう。そうなったら本当にユーリアちゃん達と遊べなくなってしまうわ。何とか抵抗はしないと

 「い〜やぁ〜だぁ〜! 私はユーリアちゃん達と遊ぶんだぁ〜!」

 そう言って手足をばたつかせて抵抗の姿勢を示す。情けない姿ではあるけど、正直これしかやりようが無いのよ

 いくらヨウコが騎士団の隊長格だと言っても所詮50レベルそこそこ。私が本当の意味で抵抗したり逃れようとしたら簡単に出来るだろう。でもそれをしてしまうと、もしかしたら怪我をさせてしまうかもしれない

 これはヨウコが50レベルと中途半端に強いのもその一因になっているのよね。私が純粋なマジックキャスターならともかく、モンク系統でもあるキ・マスターも習得している為に振りほどくだけでもかなりの力が入ってしまうかもしれないし相手がそこそこの力を持っている存在だと、どうしても力の抜き具合が難しくなってしまうのだから

 私がそう考えると読んで、メルヴァは自分ではなくヨウコの担がせたのね
 メルヴァ、恐ろしい子・・・

 今のこの状況は絶対的に私が間違っているのにそんなまねをする訳にはいかない。だから私は力での脱出をあきらめて情に訴える作戦に出ているのだ。そしてこの方法はセルニアやヨウコには効いた。私が嫌がる姿を見てあからさまに困ったと言う態度を取り始めたのよね

 よし、この手は行ける! そう思ってじたばたと駄々をこねる子供のように手足をばたつかせたのだけど、私の抵抗はここまでだった

 「セルニアさん、間違ってもこんなアルフィン様の御姿を城の者以外に見せる訳にも行きませんから転移門の鏡を使う予定を変更してゲートで帰ります。この場に開いてくださいね」

 この一言で抵抗むなしく、私は城に連れ帰らされる事になってしまった
 うう、ユーリアちゃん達と遊びたかったよぉ〜〜〜〜〜〜!

 
 ■


 「あっあるさん、おかえり! たいへんだったの? つかれてるみたいだけど」
 「ただいま、あいしゃ。そんな事は無いわよ」

 すべての事をあきらめ、自ら歩く気力もなくなった私はヨウコに担がれたままゲートをくぐり城に帰還。その情けない姿のまま衣裳部屋に運ばれて城用のドレスに着替えさせられて、地下1階層の作業区画にあるあいしゃが作業をしている場所へと訪れていた。因みに、この時点では当然ヨウコには担がれてはいない。気力は回復していないから、ぐったりしたままではあるけどね

 「それであいしゃ。例の物は出来上がっているの?」
 「うん! 出来たよ、こっち来て」

 あいしゃはそう言うと、私の手を引っ張ってある場所へ連れて行った。そこには紅白のリボンがついた白い布に包まれている大きな物体が3つと 何かが乗せられているのであろうこれまた白い布を掛けて目隠しされた大き目の作業台があった

 「へへへっ、それじゃあ見せるね。ジャジャァ〜ン! これがわたしが作ったゴーレム、金貨つくっちゃうぞぉ君1号から3号だよ」
 「うん、すごく立派だね。よく出来てるわ」

 あいしゃの合図と共にリボンが引かれて3体のゴーレムが姿を現す。そして予め命令をされていたのだろう、布が取り外されると同時にゴーレムたちが動き出した

 まず1号。これは金塊を引き伸ばして板にするもので、腕とローラーが別にあり、体の前に作られたパイ生地を作るようなローラー台に金塊を置き、それを軽く伸ばしてから持ち上げてもとの位置へ。そしてその厚い板を再度ローラーへと送る。この作業を何度も繰り返すことにより、割れや寄りの無いきれいな金の板を作り出すことが出来る

 そして2号。これは出来上がった板の側面を適切な大きさにする為の切断機のようなものが体の前についており、そこで適切な大きさに加工されたものをお腹に開いた穴へ入れると”ガチャン!”と、言う音がして下からプレスで抜かれたような綺麗な円盤状のコインが複数、箱の中に落ちてきた

 「図書館で本を読んだら、やわらかい物は全体を押さえながらぬいた方がきれいにぬけるとかかれていたからそうしたの」

 あいしゃが言うには体の中で板全体を押さえ、その板に付けられた刃で一気に複数枚抜くように工夫したのだそうな。これによって当初に想定した物と違って一度に多くぬけるし、形もきれいになるから一石二鳥らしい。あいしゃが得意満面な顔で教えてくれた

 そして3号。これは単純で大判焼き(今川焼きとも言うよね)って知ってるかな? あれを焼く板のコインサイズみたいな物が型になっていて、そこに先ほどのコインを適正数入れるとふるいが掛けられるように型が動き、全部の穴にコインが入ったら準備完了。一応コインの数が多かった時の為なのか最後に刷毛のようなもので表面をさらった後、穴に入ったコインが少し沈む

 「あれはねぇ、上からおさえたときに外にはみ出さないようにしてるんだよ」
 「なるほどねぇ」

 どうやら下型の底は動くように出来ているみたいね。その後”ガコン!”と言う音と共にゆっくりと上型が降りてきてプレス。十分に加重が掛かり、ある一定の深さまで上型が到達した後、今度はゆっくりと上昇をはじめる。すると上型の動きに合わせて下型の底もせり出したらしく、出来上がった金貨が姿を現した。そしてその金貨を先ほどの刷毛が回収。3号の前の箱に移されて完成だ

 「1〜2万枚くらいしか作る気が無かったけど、それにしてはかなり確りした物ができたわね」
 「だって、せっかく作るんだからかっこよくしたかったんだもん」

 まぁそうだね。手間を掛けるのだから手を抜いた物を作るよりちゃんとした物を作る方がいいというのは私も同意見だし、それにこの技術そのものを応用して色々な物を作る事が出来るかもしれないからこの経験は無駄にはならないだろう

 「とにかくこれで完成ね。よくがんばったわ、あいしゃ。えらいえらい」
 「あるさん、これでおわりじゃないよ! 金貨のかんせいひんを見てくれなきゃ」

 そう言うと、3号から今出てきた物の所ではなく先ほどの布の掛かった作業台へと手を引かれて連れて行かれた。あいしゃ曰く

 「あれはまだ、あぶらでべっとべとだから」

 らしいわ
 私に見せる物は、ちゃんと予めきれいに布で拭き上げた物を用意して作業台の上においてあるらしいのよ。確かに作業着ならいいけど今の私はドレス姿だし、この気遣いは嬉しいわね

 そして作業台の横においてある台の上に乗り、あいしゃはそこに設置された紐を引っ張った

 「ジャジャァ〜ン!」

 と言う掛け声と共にね

 すると、それによって白い布は上に吊り上げられ(なんとこちらは黒く塗った釣り糸で上から釣られていたらしく、何も無い状態で白い布が空に浮かび上がるかのように見える演出が凝らされていた。芸が細かいなぁ)その下からは磨かれて光り輝く金貨の山が姿を現した

 「凄い! もうこんなに作ったんだ」
 「うんっ! この子たちならあっという間にできあがるからね。このつくえの上だけで1まん枚くらいあるよ」

 そう言って「エッヘン!」と言いながら踏ん反り返り、バランスを崩しかけて危うく台から落ちかけるあいしゃ。その姿を微笑ましく思いながら私は机に近づき、光り輝く金貨を一枚手に取る

 うん、いいできだ。表面にはイングウェンザー城の絵がデザインされており(実はこれ、最初はアルフィンの顔にしようと言う話だったらしいけど却下しておいた。だって事実上私の顔が金貨になるって事でしょ。恥ずかしいじゃない)裏面は我がギルド”誓いの金槌"の紋章がデザインされている。うん、これならどこに出しても恥ずかしくないわね

 そう思って作業台の上に目を移す。作業場の魔法の明かりに照らされてキラキラ輝いて本当に綺麗。・・・あれ? これって綺麗過ぎない?

 そして私はある事に気が付いて青くなる

 「しっ、しまったぁ〜!」
 「どうしたのあるさん!?」
 「アルフィン様、どうなされました!」

 私が頭を抱えて膝から崩れ落ち、絶叫したのを見てあいしゃや私達の会話を邪魔しないよう少し離れた所で控えていたメルヴァがこちらに駆け寄ってくる。しかし私はそちらに意識を向ける余裕など無かった。なぜなら、私は決定的な間違いをしでかしてしまった事にたった今気が付いたのだから

 「だめ、これ全部作り直しだ・・・」
 「えっ!? あるさん、わたしなにかしっぱいしちゃった?」
 「どうなされたのですかアルフィン様、失敗とはどう言う・・・あっ!」

 私の言葉を受けて金貨の方に目を向けたメルヴァもある事に気がついたようだ。それはそうよね。メルヴァには話してあったもの

 「違うのよあいしゃ、あなたは何も悪くないわ。悪いのは私、全部うかつ者の私が悪いのよ」

 そう、悪いのは私。メルヴァに話しておいたのになぜ、あいしゃには話しておかなかったのだろう。本当に私は馬鹿だ

 前にエントの村に行って知った事がある。それはこの世界の金貨についての事だ。あの村の村長が言うにはユグドラシル金貨は1枚でこの世界の公金貨2枚分の価値があるという。でもユグドラシル金貨の大きさは確かに公金貨よりは大きいが2倍もの大きさがあるわけではないのよね。あの時は銀貨や銅貨が小さいのかとも思ったのだけど、金貨を作るために偵察が得意なモンスターを町に送って調べさせた所、大きさは金貨も銀貨や銅貨と同じくらいらしい。ではなぜそのようなことが起こるのか。それは簡単、金の配合率が違うのよ

 ユグドラシル金貨はゲーム内での金貨と言う事で、説明に金で出来ているとしか書かれていないので純金である24金でできている。(余談だけど、現実世界の日本で発行された金貨も24金らしいわね)でも、この世界では実際に使われるものである以上24金でなんて作れる訳が無い。だって、24金で作ったら触るだけで磨り減っていくからね。それにもし袋に入れて運ぼうものならお互いが擦れて大変な事になってしまうと思う。そんな物を通貨として使うのは自殺行為だ

 そこで図書館で過去に現実世界で使われていた金貨を調べた所、どうやら12〜22金と幅広く作られていたらしく、金に配合されたものも鉄や銀、銅が主流らしいのよ。で、エントの村で聞いた比重から考えると、どうもこの世界の公金貨は18〜20金であろうと言う事、そして金貨の色からすると銀と銅が両方使われているのではないかという結論に達したわけ

 と言う訳でメルヴァとはエントの村での内容とあわせて協議して、銀と銅をそれぞれ8パーセントずつ金に混ぜて20金の金貨を作る事になっていたんだけど、その事をあいしゃに伝える事をすっかり忘れていて今のような惨状になったと言う訳なのよ

 「また、またやってしまった・・・」

 自分のしでかした失敗に打ちひしがれ、メルヴァの「アルフィン様、金貨は溶かせばいいだけの事です。御気を確かに!」と言う言葉さえ耳に入らないほど落ち込むアルフィンだった
 

あとがきのような、言い訳のようなもの



 予定より長くはなりましたが環境整備編は今回で終わりです。そしていよいよ、前に連載を休んだ時にそこまでは絶対に書くと約束をした領主訪問編です。まぁ、今ではその先まで内容が決まっているのでこの章で終わる事は無いですけどね

 さて、今回の冒頭でメルヴァがアルフィンにいやみとも取れる発言をしています。おまけに本文では書いていませんが朝も「後5分」と何度も言って起きてくれないアルフィンに困り果てたココミがメルヴァに相談をしに行ったところ、彼女が寝室まで出向いて「何時まで寝ているおつもりですか、アルフィン様!」と叩き起こされていますw これはナザリックのNPCではありえない話ですよね。ではなぜこんな事が起こっているかと言うと、それをアルフィンが望んでいるから

 ここに至るまで、何度もメルヴァ達はアルフィンに「それは不敬では?」と聞いているのだけど、その度に「不敬じゃないし、そうしてくれると間違いに気付けて助かる」と言い続けた結果、色々な所でナザリックの面々ではありえない行動をNPCたちが取るようになってます

 また、これはナザリックの面々と違って自分達が作られてから創造主が誰一人お隠れになっていない(全キャラ主人公が作っているので当たり前ですが)のが一番大きいですね。何かあれば見捨てられてアインズ様までお隠れになられるのではないか? といつも恐怖している彼らとは基本的に気楽さが違うと言うのも一因にはなっています
 

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